令和3年度施政方針

更新日:2022年10月03日

はじめに、先月13日深夜に発生した福島県沖地震により被災した皆様に心よりお見舞い申し上げます。

東日本大震災からまもなく10年を迎えようとしていた矢先に、本町は、震度6弱の強い地震に見舞われました。町民生活に甚大な被害が出たあの大災害の記憶が甦ったところでありますが、役場新庁舎においては、非常電源が確保され、災害対策本部の速やかな設置が可能であったことから、避難所の早期開設、災害情報の収集やホームページ・ツイッターによるタイムリーな情報発信など、文字どおり「町民のための安全・安心の拠点」として、その機能を十分に発揮するとともに、職員一丸となって円滑に災害対応ができたものと考えております。

本町においては、建物の倒壊や停電・断水等のライフラインの一部寸断など、全国メディアでも大きく取り上げられるほど被害が多発したことから、居所を失った方に対する町営住宅の無償提供や、家屋等被害を受けた方々への速やかな罹災証明・被災証明の発行など、生活再建に向け支援を行っているところであります。

また、公共施設については、旧伊達郡役所や種徳美術館のほか、地域交流センター、うぶかの郷等についても利用を中止せざるを得ないほど甚大な被害に見舞われ、現在、本格復旧に向け取り組みを進めているところであります。

次に、新型コロナウイルス感染症については、世界中で猛威を振るうという未曽有の事態が一年余り続いており、さらには、新たに変異種が確認されるなど、未だに事態収束の見通しが立たない閉塞した状況下にあります。

この間、危機的な状況の中で昼夜を問わず、日々命と健康を守るために懸命にご対応いただいている医療従事者や介護従事者の皆様に深く敬意と感謝の意を表するとともに、自粛生活などあらゆる場面で感染拡大防止に向けてご協力を頂いている町民の皆様、事業者の皆様のご理解とご協力に改めて感謝申し上げます。

感染拡大防止対策については、先月14日までを「緊急対策期間」として、さらには、今月末までを「重点対策期間」として継続して各種施策に取り組んでいるところであり、昨年12月以降、新たな感染者の確認はありません。しかしながら、県内各地でクラスターが発生するなど、依然として予断を許さない状況が続いておりますので、町民の皆さま方には、引き続き、気を緩めることなく感染拡大防止策へのご理解とご協力をお願いいたします。

感染拡大防止の切り札であるワクチン接種については、医療関係者等の優先接種が全国で進んでおりますが、本町においては、先月1日に設置した「新型コロナウイルスワクチン接種プロジェクトチーム」を中心に、一日も早い接種開始に向け、県対策本部や医療機関などと連携しながら情報収集や接種体制の構築に向け着実に準備を進めております。

今後も、国や県の動向を注視しながら、関係機関と連携を密に情報収集を行い、広報紙やホームページ等を通して、迅速かつ正確な情報発信に努めるとともに、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用し、「コロナに打ち勝つ」を合言葉に、感染拡大防止はもとより、地域経済活性化や住民生活支援などの施策をバランスよく展開してまいります。

 

それでは、令和3年度の町政運営に臨む所信の一端を申し述べ、町民の皆様並びに議員各位のご理解を賜りたいと存じます。

新しく迎える令和3年度は、東日本大震災や原発事故災害からの復興関連事業を整理するとともに、コロナ禍を踏まえ、感染拡大防止と経済再生の両立を図りながら、地域社会・経済の再構築に向けた取組みをより一層強化しなければならない年であると考えております。

さらには、現総合計画の最終年次であり、ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、少子高齢化やデジタル社会、脱炭素社会の進展など、取り巻く社会情勢の変化に真正面から向き合いながら、引き続き、「住み続けたいまち 住みたいまち 桑折」の実現を目指し、町民の皆様とともに「桑折らしさ」を大切にし「桑折ならでは」の施策を展開し、その先の輝かしい未来に向かって、着実な歩みを進めていかなくてはならないと意を強くしているところであります。

はじめに、新年度の事業概要について申し上げます。

新年度当初予算編成にあたりましては、「平時」とは違う前提であることを念頭に、コロナ対策を推進しながら、令和4年度からの「新総合計画」に沿ったまちづくりへ円滑に移行するため、「健康と福祉の町」「危機管理に備える町」など6つの重点項目に優先配分するよう指示しました。

一般会計については、復旧・復興事業を含め総額53億7,840万円で、新庁舎建設事業の完了や仮置場解体工事等の減などにより、前年度比19億9,370万円、率にして27.0%の減としながらも、コロナ感染症対策や地域経済活性化、教育の充実、農業振興、健康づくりなどに力点を置いた予算編成となっており、私は、この当初予算を丑年にちなみ「コロナ禍を着実に歩む予算」と名付け、コロナ禍を克服した輝かしい未来に向かって着実に一歩を踏み出す年にしてまいりたいと考えております。

以下、総合計画の区分等に従って、新年度の主な施策の一端についてご説明申し上げます。

 

はじめに、重点プロジェクトに関連する施策についてであります。

第1は「『献上桃の郷』展開プロジェクト」についてであります。

昨年甚大な被害を被った「モモせん孔細菌病対策」については、防除費助成の拡充やベニカナメモチの植栽による防風林設置費用の助成をしてまいります。

「就農者支援事業」については、対象要件や交付額の拡充を図るとともに、新たな農業後継者に対する激励金交付事業の創設や「地域おこし協力隊」の募集を通じて、新規就農者や農業後継者の確保に努めてまいります。

「献上桃の郷」PR事業については、楽天ゴールデンイーグルスとのオフィシャルスポンサー契約を継続し、主に仙台圏をターゲットに戦略的なシティプロモーションを展開するとともに、「こおりうまいものフェス」の開催や6次化産品の開発により、本町の魅力を内外へ発信し、交流人口の拡大、関係人口の創出に取り組んでまいります。

第2は「21世紀の追分推進プロジェクト」についてであります。

伊達桑折IC周辺については、相馬福島道路の全線開通が地震の影響によりゴールデンウィーク前後に延期されることになりましたが、伊達市において、大型商業施設の整備計画が動き出すなど、本町を含めた周辺地域の地理的優位性がますます顕著となっていることから、「新産業団地基本構想(適地選定)策定業務」の成果等を踏まえた土地利用の推進と企業誘致の活動に努めてまいります。

第3は「歴史まちづくり推進プロジェクト」についてであります。

「歴史的風致維持向上計画」については、「史跡桑折西山城跡整備事業」の集大成として、「第28回全国山城サミット桑折大会」を開催し、「伊達氏発祥の地」として、本町を全国に広くPRしてまいります。また、全国から来訪する歴史・城郭愛好者に本町の歴史を体感してもらえるよう、旧伊達郡役所の早期修復と門扉復元事業や、国道4号から西山城跡までの誘導案内板の設置、万正寺の大カヤ周辺整備事業を進めてまいります。

整備計画3年次を迎える「かわまちづくり事業」については、国土交通省との連携のもと、川に触れ合う癒しの場として観光誘客を目指し、阿武隈川河川敷周辺の整備を進めてまいります。

第4は「町民のための庁舎整備プロジェクト」についてであります。

「こおり新時代の象徴」である役場新庁舎については、1月4日の開庁以来、2カ月が経過しましたが、先月の大型地震の対応など、早速その機能を十分に発揮するとともに、町民が気軽に庁舎を訪れる様子がうかがえ、まさに「町民のための役場」であることを実感しております。5月には「コロナに打ち勝つ!桑折エールプロジェクト第3弾」として、中止になった開庁イベントに替え、経済団体や文化団体等と連携し、庁舎前広場をメイン会場に町民参加型のイベントを開催する予定であります。今後とも、引き続き、町民に親しみ、愛される役場づくりに、全職員一丸となって努めてまいります。

 

次は、総合計画の5つの分野別重点施策についてであります。

はじめに、1つ目の方針「魅力的で活力ある 地域社会の創生」についてであります。

農林業振興については、「営農再開支援事業(果樹改植事業)」や「農地流動化奨励金(団地化奨励金)事業」、「恵みの農地再生事業」を継続するほか、「ふくしま森林再生事業」を推進するとともに、整備後、30年以上を経過した半田山自然公園の新たな利活用について、検討に着手してまいります。

また、有害鳥獣対策については、「電気柵等資材購入事業補助金」の拡充等に加え、新たに「侵入防止柵集落圃場設置モデル事業」や「放任果樹伐採事業」、「自走式草刈機購入及び貸出事業」により、被害低減に向けた対策強化を図ってまいります。

次に、商工業振興分野では、空き店舗等を活用した新規創業を支援する「チャレンジショップ事業」を進めるほか、商工会等が主催するイベントの支援、コロナ禍の影響を受けた事業者の負担軽減を図る「新型コロナウイルス対策資金融資利子補給補助金制度」等により、事業活動の継続を支援してまいります。

次に、観光交流分野では、「レガーレこおり」の運営主体である振興公社の運営支援を行うとともに、連携を図りながら、首都圏や仙台圏でのPRを推進し、観光誘客促進と交流人口の拡大に努めてまいります。

次に、「町都市マスタープラン」に掲げる駅前公有地の利活用については、醸芳中学校跡地に新庁舎が完成したことから、残る福島蚕糸跡地については、近年の統計動向、各種アンケート等における町民意見や要望を踏まえ、検討を重ねた結果、「まちの顔」として商業施設を核とした「交流」・「子育て」等の機能を持つ「ここにしかない複合施設整備」を、民間の豊かな発想や専門性、資金力を活用した官民連携により進めてまいります。

また、「旧庁舎敷地等の利活用」については、「町内民間業者や国土交通省主催のサウンディング」結果等を参考に、宅地を条件とした民間への売却手続きを進めてまいります。

次に、移住・定住分野では、若者定住促進事業等を継続するとともに、新たに、新婚生活を始める方に向けて経済的負担の軽減を図る「結婚新生活支援事業」や、お試し住宅としてホタピーハウスを活用した「移住定住PR促進事業」に取り組んでまいります。

また、「桑折駅前団地」については、復興の進展によって空き戸数が増える傾向にあることから、国と「被災者向け住宅」としての用途の廃止について協議を進めているところであり、今後は、子育て中の若い世代等をターゲットとした移住・定住促進住宅として活用してまいりたいと考えております。

 

続いて、2つ目の方針「健やかで希望に満ちた 暮らしの確立」についてであります。

新型コロナウイルス感染症対策については、引き続き「新しい生活様式」の実践と定着を推進しながら、感染拡大防止に努めるとともに、ワクチンについては、供給量と時期など国や県の動向を注視しながら、関係機関と連携し、安全かつ速やかに接種ができるよう努めてまいります。

次に、結婚・子育て支援分野については、県が実施する結婚マッチングアプリ「はぴ福なび」の登録料を助成する「出会い結婚支援事業」を創設するとともに、18歳以下の医療費の全額助成や各種予防接種費用の助成、「すくすく育児パッケージ」事業の継続に加え、子育て支援アプリに、新たなオンライン相談機能を追加するなど、結婚・妊娠から子育て期にわたりきめ細やかに支援してまいります。

次に、健康づくりについては、大手企業と連携した「先駆的健康づくり事業」の継続や、「こおり健康楽会事業」の充実を図りながら、行政・企業・町民が一丸となり、「桑折ならでは」の取り組みを推進し、健康寿命の延伸などに取り組んでまいります。

次に、高齢者福祉分野については、本年度同様、コロナ対策の一環として、敬老会に替えて「フラワーヘルス事業」を実施するとともに、好評を博している「献上桃の郷お出かけパス事業」により、高齢者や運転免許証自主返納者の交通手段を確保してまいります。

次に、地域福祉分野では、今年度策定の「第8期桑折町高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、すべての高齢者が住み慣れた地域でいつまでも健やかに安心して暮らせるよう、介護・介護予防・生活支援などの各種施策を町民とともに推進してまいります。

続いて3つ目の方針「安全・安心で住みやすい 生活環境の構築」についてであります。

消防・防災分野については、近年、頻発かつ激甚化する豪雨や地震などの自然災害に備え、継続的な地域防災訓練や災害図上訓練を実施し、消防団や町内会など関係団体との連携を緊密にしながら、自助、互助・共助、公助に基づく地域防災力強化に努めてまいります。

次に、環境衛生分野については、除染による除去土壌の搬出が今年度中に完了することから、仮置場解体を計画的に進めてまいります。

次に、環境共生分野については、住宅用太陽光発電設備・ペレットストーブ等の設置費補助を継続するとともに、再生可能エネルギーの導入に向けた「第2期桑折町再生可能エネルギー導入推進計画」を策定し、「再生可能エネルギー推進の町」宣言にふさわしい事業の展開を目指してまいります。

次に、居住環境分野については、「桑折まちづくりネット」が実施する空家相談会開催等の事業支援や、空家バンク活用による空家等の市場流通促進を図るとともに、「桑折町空家等除却工事補助制度」の継続に加え、固定資産税の「住宅用地特例除外」や、除却後の固定資産税軽減等の適用など、除却促進に向けた新たな取組みも進めてまいります。

また、市街化調整区域内の空き家については、農業委員会2月定例会において、農家要件の耕作下限面積が引き下げられるとともに、空家バンクに登録された農地付き空家の取得要件が緩和されたことから、就農者の確保や移住定住につなげていきたいと考えております。

次に、水道分野については、老朽管の計画的な布設替え工事を進め、安全で安心な水の安定供給に努めるとともに、今年度策定の「水道ビジョン」に掲げる理想像実現に向け、簡易水道組合の施設調査を実施してまいります。

 

続いて4つ目の方針「志高い人材を育む 学びの醸成」についてであります。

乳幼児保育と小中学校教育については、共働き等で保育が困難な家庭を対象とした待機児童ゼロの取組みや新入園児・児童・生徒への制服支給事業、幼稚園・小中学校での給食費助成を継続し、保護者の経済的負担の軽減を図ってまいります。

GIGAスクール構想については、タブレット端末やネットワーク環境整備が他市町に先駆けて先月末までに完了したところであり、今後、ICT教育を本格的に実施してまいります。

学力向上対策については、本町の教育目標である「桑折町の15歳のめざす姿」の実現に向け、読み・書き・計算の徹底反復や「桑折学習塾」の開催、英語指導協力員の配置及び英語検定料助成など、特色ある教育活動を推進するとともに、教育支援センターの運営やスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーとの連携により、個々に応じたきめ細かな支援に努めてまいります。

次に、生涯学習分野については、中央公民館を拠点とした社会教育・体育の推進を図るため、館長に加え、新たに「公民館運営推進員」を2名配置いたします。

 

最後は、5つ目の方針「計画推進に向けた取組み」についてであります。

住民自治については、まちづくりを進める上で欠かすことのできない町内会や住民自治協議会活動が何より重要であることから、新型コロナウイルス感染症対策等について十分に配慮した自主的な活動の促進に向け、引き続き、支援をしてまいります。

次に、行政分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進については、コロナ禍を契機に、産業や暮らしなどあらゆる分野でICTやAI等を活用したデジタル化への変革が求められていることから、庁内推進会議の設置やアドバイザーの招聘等により体制を整備してまいります。

また、マイナンバーカードについては、今後のデジタル社会の構築に向けて、必要不可欠であることから、さらなる普及率向上に努めてまいります。

新総合計画については、現在、素案のとりまとめ中であり、今後、審議会や懇談会を開催し、広く町民の意見を聞きながら、新たなまちづくりの指針として、9月までに策定するとともに、計画の着実な推進を図るため、組織機構の再編を行ってまいります。

次に、広報広聴活動については、今年度、県市町村広報コンクールにおいて2部門特選に輝いた「広報こおり」や町ホームページ、SNS、ネットワークメディア等を通して、タイムリーな情報発信に努めてまいります。

以上、新年度における主要事業の概要を申し上げましたが、この予算の執行にあたりましては、職員一人ひとりが中・長期的な視点に立ち、常に経費全般にわたる節減合理化等の取組みを推進し、最少経費で最大の効果を上げるよう努めてまいります。

 

結びに、今月11日で、あの東日本大震災・原発事故災害から10年を迎えることとなります。振り返ってみますと、10年前の3月11日、本町を取り巻く環境は激変し、多くの障害・障壁が我々町民の前に立ちはだかることになりました。私たちは、「町土の除染なくして復興なし」「町民の健康なくして復興なし」「町民の安心なくして復興なし」を三大スローガンに掲げ、町民一丸となって未曽有の大災害からの復旧・復興に力強く取り組んできた結果、今日、「こおり新時代」を迎えることができました。

しかしながら、その喜びも束の間、現在、私たちは、過去に経験したことのない感染症という「見えない脅威」との戦いを再び強いられることになりました。

私は、10年前同様、町民の皆さまの「命」と「暮らし」を守るため、その先頭に立って、「コロナに打ち勝つ」を合言葉に、各種施策に力強く取り組んでまいる所存であります。そして、一万全町民が、桑折人の気概をもち、心ひとつに真摯に向き合うことにより、必ずやコロナ禍を克服し、輝かしい未来に向かって歩みを進めることができるものと信じております。

町民の皆様をはじめ、議員各位におかれましても、引き続き、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、令和3年度の施政方針とさせていただきます。