第1回「二本ぶな」

更新日:2018年03月16日

今月号から、「桑折ことばむかしばなし」(平成3年発行すでに絶版)の掲載されている話を紹介し、現在その場所がどうなっているか取材するコーナーです。第1回は、

「二本ぶな」

昔、旅人が半田山の山道のあだりで具合悪くなっちまって困ってだっけ、折良く北半田の人通りかがって、家させでって休ませでくっちゃんだげんとも、治んのには暇かがって、旅立つ時でも、元の体のようにはみっちらとならんにがったんで、重でえ物なんては山の麓に埋めで来て、身軽になって、「山中に埋めてきた荷物には、少し訳があるものなので、きっと折りがあれば取りに参りたい。しかし、10年たっても荷物を取りに戻らなかったら、わしの身に何かあったのだと思ってそれを掘り当てて下され。それをこの度のお礼にして下され。荷物を埋めた目印は、この紙に認めて書き申した。」って語って、書付を渡すと旅だったんだと。その書付さは、

「朝日差し 夕日輝く 二本ぶな 信夫の里を見下ろして 黄金千貫 朱千貫」

なんて、書がってだんだけども、何のこったが、呪文みでながんで、その紙切れは神棚の隅ですすけでしまたのよない。

その家の主人は、たまにあの旅人の事思ったりしたごどもあったげんと、毎日仕事にぶぐらっち、20年も経ってしまったんだどない。

そろそろ、財布、息子に譲る年に近ぐなって、なんぼか心残りになって、神棚の紙切れ、息子さ言って下ろさせてその話聞がせっと、間もなく息引き取っちまたんだどない。

この呪文みでな歌みでな文句だんだんとあだりさ広まって

「黄金埋めでったそうだ」「いや作りごどだべ」「今度の休みに掘ってみっか」なんてあっちこっちで宝探しさ行った人らもあったげんとも、誰ひとり探しあでだ人はいねえのない。この話は本当だぞい。

これらの話から推察すると、半田山の裏側の松原字源風森周辺にお宝が眠っていると取材班は推測しました。

理由として

  1. 半田山の山道=茂庭から半田山の裾野を抜ける山道がある。
  2. 信夫の里を見下ろせる=信夫山周辺を見渡せる。
  3. 二本のぶなから朝日と夕日が見える=南斜面になっている土地。
  4. 過去に宝探しをした人がいる大字南半田字萱尻の大日如来付近で宝探しをした人がいる。

取材班は現地に向かい、宝探しを開始しましたが、我々を待ち受けていたのは思わぬ展開でした。続きは桑折町のホームページへ。

ということで7月某日、気温は30度を超える暑さの中、我々取材班は、車で一時間ほどかけて桑折町大字松原源風森に到着。背丈ほど伸びている草むらに車を止め、目印となる二本のブナの捜索を開始しました。

松原字源風森の風景写真

松原字源風森に到着 正面に見えるのが半田山

いくら捜しても二本のブナはまったく見当たらず、取材班は朝日と夕日の射す南斜面をどんどん下りました。下り終わると大きな沢が取材班の前に立ちはだかりました。

大きな沢は産ヶ沢川の源流でした。南半田字萱尻の大日如来碑の約100メートル上流でした。(以前にもこの場所に来たことがある) このまま急な斜面を引き返すのも大変なので取材目的を急遽変更し(取材班が熱中症になりそうだった)、産ヶ沢川の源流を見つけることにしました。

大日如来碑から100メートル上流の沢の写真

大日如来碑から100メートル上流の沢に到着

いくつもの滝があり、沢も枝別れしていましたが、水量の多い沢が源流だと仮定し、どんどん登って行きました。

流れが細い岩盤を水が流れている写真

流れは細くなり、岩盤を流れている

流れは細くなり岩盤のようなところを流れていました。

ついに源流と思われる水が湧き出す場所に到着。

産ヶ沢川の源流の写真

ここが産ヶ沢川の源流か?

写真に収め、一行が安堵していると、すぐ近くからトラックのエンジン音が聴こえ、取材班は耳を疑いました。山の中を2時間歩きまわり、熱中症による幻聴かと思いました。

源流と思われる場所から20メートルほど駆け上がるとそこには見覚えのある登山道が、さらのそこから30メートルほど先には見覚えのある道路がありました。取材班はお互いの顔を見ながら大笑い。

源流の20メートルほど上の登山道の写真
登山道から30メートルの車が駐車できる万歳楽山登山道入口の写真

源流の20メートルほど上に登山道。登山道から30メートルほどで車が駐車できる万歳楽山登山道入口に到着。

その場所は、国見牧場の道路で、万歳楽山登山道の入り口でした。取材班は、何度も万歳楽山を登っているのでおなじみの場所でした。

今回の取材では残念ながら、宝物はおろか二本ぶなも見つけることはできませんでした。しかし、私達が普段口にする水道水に使われている産ヶ沢川の源流を拝むことができ、皆さんに紹介することができたので今回の取材はまずまずの成果があったのではないかと思います。 

次回の桑折ことばむかしばなし検証は「刈満峰の石仏」です。

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