桃農家インタビュー vol.1 南友佑さん

更新日:2024年01月31日

南友祐(みなみともすけ)さん

桑折町の桃生産のパイオニア 「今もあの感激は忘れない」

約2ヘクタールという広大な桃畑で、献上桃として選ばれているあかつきをはじめ、14種類近い桃を栽培している南友祐さん。父親が缶詰用桃を生産していたことから、幼い時分より手伝いを始めており、70年近く桃づくりに携わっています。現在は妻の春子さん、息子の祐宏さんと3人で桃農園を営んでいますが、400本近い桃の木があるため、収穫時期には10名ほどの人たちの手を借りているそうです。三男であったことから運送業などにも就いた経験がある南さんでしたが、収穫の手伝いなどをして美味しい桃を食べるたび、「いつか、この美味しい桃を天皇陛下に食べてもらいたい」という想いが込み上げてきたといいます。

熱い想いに駆られた南さんは一念発起。当時、桃の産地として有名だった山梨県の桃農家を1年間に3回以上、約10年間訪ねて、美味しい桃の作り方を習得。桑折町全体で美味しい桃づくりに取り組むべく、役場や農協などに協力を仰ぎ、勉強会などを数年間にわたり開催し、たくさんの人々の努力と協力が実を結び、桑折町の献上桃が誕生したのです。「桃を献上することが決まったときには、喜びより、驚きの方が大きかったかもしれません。でも、時間が経ってから、自分たちの努力が報われたことを知り、涙が出るくらい感動したことを今も覚えています」と南さんは述懐します。

さらに美味しい桃を作り続けていきたい

桃が架け橋となり、1996(平成8)年4月26日には皇太子・皇太子妃両殿下(当時)が桑折町の桃畑を訪れ、美しい桃の花を鑑賞。2015(平成27)年7月16日には天皇・皇后両陛下(当時)も桑折町の桃園を訪問されています。皇太子殿下・雅子妃殿下、天皇・皇后両陛下ともに訪れたのは南さんの桃畑で、現在は2つの記念碑が建っています。「ご挨拶もさせていただきました。やっぱり緊張しましたね」と南さんは当時を振り返ります。努力の末に美味しい桃づくりに成功した南さんですが、桑折町の桃が美味しい理由を尋ねると、「1m以上掘っても泥質が出てこない水はけの良い土壌と、夏熱く冬寒い盆地状の気候が大きいね。私たちは桃が美味しく育っていく手伝いをしているだけです」と謙虚な姿勢を崩しません。

現在は、桃農園を営むと同時に、桃づくりに励む地域おこし協力隊の指導も行っています。「教える資格なんかないんだどね(笑)。一つひとつ心を込めて作ることはもちろん、まずは桃を好きになること。嫌いでは、良い桃は決して採れませんから。でも、若い人たちが桃づくりに興味を持ってくれるのは嬉しいね」と笑顔を浮かべます。そんな南さんですが、天候の変化には毎年苦労しているそうで、「収穫の時期に3日も雨が降ると甘みがなくなってしまうからね。天気ばかりはどうしようもないから大変だよ」とこぼす半面、「これからももっと勉強して、いい桃を作っていきたいね」とますます意気盛んです。

友佑さんと息子の佑宏さん