桃農家インタビュー vol.3 蓬田進也さん

更新日:2023年11月29日

蓬田進也(よもぎたしんや)さん

一年中気が抜けない やりがいがある仕事

3.5ヘクタールという広大な桃畑を営む蓬田進也さんは農園の3代目。父の幸夫さんら3人であかつき、まどか、幸茜(さちあかね)、なつおとめなど10種類以上、約630本もの桃を栽培しています。「農家となって、私は今年で20年目になります。桃農家を継ぐ契機となったのが19才の頃、高校を卒業して進路選択となったときに、親父から、「茨城のつくばにある、国の試験場に行ってみないか」という話があり、短大みたいに実習メインで学ぶところがあったので、そこに行くことに決めました」。試験場で、2年間桃栽培を学んだ後、福島に戻り、家業に就きました。

桃の栽培は一年中休みがなく、3、4月の摘蕾(てきらい)に始まり、花取り、花粉交配と続いていきます。花粉を持っていない品種にはミスト、毛ばたきなどを使い、人の手によって受粉させていきます。実がなったら摘果。少しずつ数を絞り、減農薬のために袋がけをしていきます。皮の赤みが増すよう、木の根周辺に反射材のシートを敷くこともあるそうです。「一年中気が抜けない仕事ですけど、だからこそやりがいがあります」と爽やかな笑顔を浮かべます。

自分に合う美味しさを探すのも楽しい

猛暑日などは、反射シートの眩しさに目の前が真っ白になってしまうこともあるなど、どれも大変な仕事ですが、美味しい桃づくりにこだわりを持つ進也さんが一番大切にしているのが“適期収穫”。「ちょうどいいタイミングで採ることは簡単なようでとても難しいです。以前は脚立で登っては触った時の感覚や緑から白っぽくなり、赤みが入っていく色のつき具合などを一つ一つ確認していましたが、1年ぐらい前からやっと下から見上げただけで分かるようになりました」という進也さん。まさに熟練の技といえます。

“献上桃の郷”桑折町で桃づくりに携わる者として、「献上桃が始まったのは父の世代から。現在まで継続し、令和5年で30年目の節目を迎えましたが、これからも、とことん続けていきたいです」。さらに、「献上桃はこれまで“あかつき”だけだったので、違う品種も味わっていただきたいと考えています。福島県のオリジナル品種“ふくあかり”をおすすめしたいです」と意欲的な言葉を続けます。

「福島の桃は他の地域に比べて固めなので、少し置いておけば、固さも甘さも変わってきます。日にちを置いて、自分に合う食感や甘さを探していくのも楽しいと思いますよ」。