桃農家インタビュー vol.2 蓬田宗由さん

更新日:2023年11月29日

蓬田宗由(よもぎたむねよし)さん

一番大変なのは収穫のとき 見極めの判断が難しいです

皇室への献上桃として知られる“あかつき”を中心に、2ヘクタールの桃畑で、13種約300本の桃の栽培をしている蓬田宗由さん。桃畑を始めて16年目となる蓬田さんは現在、母の美和子さんと2人で栽培に勤しんでいます。「30才のときに決意しました。当時はサラリーマンでしたが、幼い頃から親父の手伝いをしていましたので、自然の流れですね」と3代目桃農家としての自覚も伺えます。

収穫は1品種、1週間から10日ほど。品種ごとに行い、7月頭から9月中旬ごろまで繰り返していきます。冬の剪定(せんてい)、早春の芽かき、晩春の摘蕾(てきらい)と続いていく中で、最も大切にしているのが収穫のタイミングです。「何もしないでいると50cmほどの枝に100個ぐらいの蕾がつくんですよ。そこから日当たりや、花の向きなどを見て最終的に2個に絞っていく作業も大変ですが、一番はやっぱり収穫ですね。採るタイミングが早いと固いし、遅いと柔らかくなってしまう。見た目と香り、触った感じの張りで判断しているのですが、これが本当に大変です」と微苦笑を浮かべます。

美味しいと言われる桃をずっと作っていきたい

近年は相次ぐ異常気象への対応にも迫られているといいます。暖冬の年は花が早く咲いてしまい、花に霜が降りると実がならない遅霜の被害に遭うこともあり、被害を防ぐために、夜中の2時ころから火を炊いたり、防霜ファンを設置するなどの対策を施しています。

蓬田さんが一番辛かったのが東日本大震災のとき。「その年の桃は一切動きませんでした。とても美味しくできた年だけに、『福島の桃は食べない』と言われたときは本当に辛かったですね」。個人贈答も手がけていた蓬田さんは、「注文されて別の方に贈る方がほとんどでした。贈った人から『福島の桃は嫌だ』と言われるのが怖かったので、最初に今の状況を説明し、それでも欲しい方は先方の確認をとってください」と手紙で依頼したそうです。了承した人に桃を送った結果、「贈られた人から『すごく美味しかった。また食べたいので注文してもいいですか』と言われ、送らさせてもらったときが一番嬉しかったですね」。まさに禍福は糾える縄の如し。個人贈答の件数は震災の年が最も伸びたといいます。「お客さんが美味しいと感じるものを作れば、『もっと食べたい』『周りにも広げたい』と思ってくれる。いろんな経験をした1年でした」と振り返ります。

今後も、「新しい品種を考えながら、美味しいと言われる桃をずっと作っていきたいです」と意欲を見せています。